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関節リウマチとは
関節リウマチは、自己免疫疾患の一つで、主に関節の滑膜に慢性的な炎症を引き起こす病気です。40〜60代の女性に多く見られますが、他の年齢層や男性にも発症することがあり、日本では患者数が80万人以上とされる非常に身近な病気です。
関節の痛みや腫れが生じ、さらに進行すると関節の変形や機能障害を引き起こします。特に、両側の関節に対称的に影響を及ぼしやすく、手指や手首、足首などの小さな関節が初期に侵されることが一般的です。炎症が長く続くと、関節軟骨や骨が破壊され、動かしづらさや機能の低下を招きます。
一度変形した関節は元に戻すことができないため、変形が進行する前に適切な治療を始めることが重要です。特に発症後早期は、治療が比較的効きやすく、この時期に治療を開始することが最も効果的です(この時期を「window of opportunity」といいます)。
症状がある場合は、できるだけ早く受診していただきたいと思います。
当院では正確な診断を行い、最適な治療を提案させていただきます。
関節リウマチの症状
関節リウマチでは、以下のような症状が現れることがあります。
- 手足の関節が痛い・腫れる
- 朝、手がこわばる
- 手の指がむくんでいる
- 足の裏、指のつけねが痛む
- 倦怠感がある
- ペットボトルが開けにくい
- タオルがしぼりにくい
- ボタンがはずしにくい
- バンザイができない
- ペンが持てない
- お箸が使いづらい
- じゃんけんのグーができない
- ドアノブが回しにくい
- リモコンのボタンを押しにくい
- パソコンのキーボードを押しにくい など
関節リウマチの原因
現在のところ、関節リウマチの根本的な原因は解明されていませんが、遺伝的要因と外的要因が重なり、免疫の働きに質的な異常を引き起こすことで発症に至ると考えられています。
遺伝的要因
ゲノムワイド関連解析(GWAS)によって、関節リウマチにおける複数の疾患感受性遺伝子が同定されています。関節リウマチの疾患感受性遺伝子には、タンパク質のシトルリン化や免疫系に関与する遺伝子が含まれており、これらの遺伝的な変化が発症のリスクと関連する可能性が考えられます。
例えば、Shared epitope(SE)は、関節リウマチの発症において重要な遺伝的要因とされています。SEはHLA-DRB1遺伝子に存在する特定のアミノ酸配列で、この配列があることで、シトルリン化ペプチドなどの自己抗原がより効率的に抗原提示細胞上に提示されやすくなります。
具体的には、SEを持つHLA-DRB1遺伝子の産物であるMHCクラスII分子が、シトルリン化ペプチドを強固に結合し、抗原提示細胞の表面でこれらのペプチドをT細胞に提示します。SEが存在すると、この抗原提示の効率が高まり、T細胞が活性化されやすくなります。活性化された自己反応性T細胞は、B細胞を活性化し、抗シトルリン化ペプチド抗体などの自己抗体の産生を促進することで、関節炎の発症に関与していると考えられます。
外的要因
外的要因では、喫煙や歯周病などが重要だとされています。これらが、特にシトルリン化蛋白の生成と、それに対する自己抗体の産生を促すことで、関節炎の発症に関与している可能性が示唆されています。
ホルモンバランスの影響
関節リウマチの発症には、女性ホルモン、特にエストロゲンが関与していると考えられています。エストロゲンは免疫系の働きに影響を与えることが知られており、エストロゲンの影響で免疫異常が誘発され、関節リウマチの発症リスクが高まる可能性が指摘されています。
関節リウマチは、特に女性に多く見られる疾患であり、40〜60代の女性に好発することが知られています。この年齢層は、更年期に差し掛かる時期であり、ホルモンバランスの変化が免疫系に影響を与えることが考えられます。また、妊娠中に関節リウマチの症状が軽減し、出産後に再び悪化することがあるのも、ホルモンの変動が関与しているとされています。
関節リウマチの検査
関節リウマチの診療にはさまざまな検査が必要です。
関節エコー検査
当院では、診察時に関節エコーを実施できるため、予約の手間なく即時に検査が可能です。
関節エコーは、関節リウマチの診断や病状把握に非常に有用で、腫れや変形を確認できるだけでなく、パワードプラ法により炎症の活動性も正確に評価できます。これにより、症状の有無にかかわらず隠れた炎症を検出し、骨破壊のリスクを評価することが可能です。また、エコーは治療の効果判定や治療方針の見直しにも役立ちます。
血液検査
関節リウマチの診療において、血液検査は欠かせない検査です。診断、合併症の評価、治療効果の確認、副作用のチェックなどを目的に行います。RFや抗CCP抗体、CRPなどの検査に加え、他の膠原病や臓器障害の評価、感染症の確認など、多岐にわたる項目が含まれます。
X線検査
関節リウマチの診療には手指X線検査が重要で、関節破壊の有無や程度を評価します。診断に有用であるばかりでなく、定期的な検査により、関節破壊の進行の有無を評価し、治療方針の妥当性を確認します。また、胸部X線検査も行い、肺病変(間質性肺炎など)合併の有無を評価します。
MRI検査
特にRFや抗CCP抗体が陰性の場合、MRI検査が診断の助けとなります。エコーでは確認できない骨髄浮腫などの詳細な評価が可能で、関節リウマチの診断や病状把握に役立ちます。
検査は当院の連携施設で実施し、迅速な結果説明が可能です(最短当日)。
以上のように、当院では関節リウマチの診断と治療に必要な検査を、患者様の個々の状況に応じて適切に行い、質の高い医療を提供しております。
関節リウマチの治療
関節リウマチは完治が難しい疾患とされていますが、治療薬の進歩もあり、近年では治療により寛解(症状などが完全になくなった状態)を実現することが可能になりました。多くの患者様において、適切な治療を行うことで、痛みがなく(臨床的寛解)、変形を生じることがなく(構造的寛解)、関節を自由に動かせる状態(機能的寛解)を実現することが可能です。
治療は、十分なご相談のうえで、患者様とご一緒に進めてまいります。
上記の寛解といった状態を目指し、病気の勢い(疾患活動性)を正確に評価した上で、それに応じた最適な治療を組み立ててまいります(Treat-to-Target(T2T))。
治療は、主に疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARDs: disease-modifying anti-rheumatic drugs)という種類の薬を用いて行います。これは、関節リウマチの病気自体に働きかけ、病気そのものを良くする薬です。
このDMARDsには、以下の3種類があります。
- 従来型合成DMARDs(conventional synthetic DMARDs: csDMARDs)
- 生物学的製剤(biological DMARDs: bDMARDs)
- 分子標的型合成DMARDs(targeted synthetic DMARDs: tsDMARDs)
従来型合成DMARDs
従来型合成DMARDsのうち、メトトレキサートという薬が本邦や欧米のガイドラインにおいて第一選択薬に位置づけられており、アンカードラッグと呼ばれるリウマチ治療の入口にして最も重要な薬剤です。
生物学的製剤
2024年8月現在、本邦で使用可能な生物学的製剤には、先行バイオ医薬品9剤と、3種類のバイオ後続品(バイオシミラー)があります。
分子標的型合成DMARDs
分子標的型合成DMARDsには、5種類のJAK阻害薬という内服薬があります。
どの薬剤も当院において使用可能であり、これらの治療薬を適切に使用することで、従来よりも圧倒的に多くの患者さんにおいて寛解を達成することができるようになっています。
これらは、薬剤毎に投与経路、代謝経路、単剤での有効性、副作用毎の頻度や費用といった様々な特性が異なり、患者様のご意向、病状や合併症などを踏まえたうえで丁寧に治療を進めてまいります。
また、妊娠、出産を予定されている方、あるいは妊娠中の方に、関節リウマチの症状があらわれ、十分な治療が必要になることがあります。そのような場合でも、それぞれの状況に適したオーダーメイドの治療によって、安全に寛解を目指すことが可能です。
院長は、長年、大学病院や高度医療機関などで研鑽を積んでまいりました。豊富な診療経験をもとに患者様のご病状を的確に評価し、最適な治療を提案させていただくことが可能です。
関節リウマチの症状や治療でお悩みの方は、お気軽に当院までご相談ください。
(2024年9月9日時点)