乾癬性関節炎

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乾癬性関節炎とは

乾癬性関節炎とは

乾癬性関節炎は、皮膚に赤い発疹や鱗屑ができる乾癬に関連して発症する慢性の関節炎です。乾癬を患っている人の約15%がこの関節炎を発症し、関節や腱、靭帯に炎症が起こります。特に、手指の末梢関節や脊椎、仙腸関節に影響を及ぼし、関節の痛みや腫れ、さらには爪の変色や凹みが見られることもあります。
乾癬性関節炎は、適切に治療しないと関節の変形や機能障害を引き起こし、長期的な関節の予後に悪影響を及ぼす可能性があります。早期の診断・治療により関節の損傷を防ぎ、生活の質を維持することが重要です。
当院では正確な診断を行い、最適な治療を提案させていただきます。

乾癬性関節炎の症状

乾癬性関節炎では、以下のような症状が現れることがあります。

  • 手指や足趾の関節の痛みと腫れ
  • 手指や足趾全体の腫れ(ソーセージ状)
  • 朝の関節のこわばり
  • 爪の凹みや変色、剥がれ
  • 背中や腰の痛み
  • 乾癬による皮膚の紅斑や鱗屑 など

乾癬性関節炎の原因

乾癬性関節炎の根本的な原因は明らかになっていません、以下のような要因が関与していると考えられています。

遺伝的要因

乾癬性関節炎は、遺伝的要因が強く関与しています。HLA-B27を含む特定の遺伝子型が、乾癬性関節炎の発症リスクを高めることが知られています。また、家族に乾癬や乾癬性関節炎の患者がいる場合、発症リスクが高くなることが報告されています。

免疫系の異常

乾癬性関節炎は、免疫系の異常によって引き起こされる疾患です。T細胞という免疫細胞(特にTh1細胞、Th17細胞、CD8+T細胞)が過剰に活性化され、関節や皮膚を攻撃することで炎症が引き起こされます。この免疫応答は、特にIL-17やTNF-αなどの炎症性サイトカインを介して増強されます。これにより、関節や皮膚に慢性的な炎症が生じ、関節の破壊や皮膚症状の悪化が引き起こされます。

環境要因

環境要因も乾癬性関節炎の発症に影響を与えます。たとえば、細菌やウイルスによる感染症が引き金となって、乾癬や乾癬性関節炎を悪化させることがあります。また、喫煙や肥満、過度なストレスも免疫系に悪影響を及ぼし、症状を悪化させる要因となります。特に、肥満により脂肪組織が増加すると、脂肪細胞からアディポカイン(TNF-αなど)と呼ばれる炎症性物質が多く分泌され、免疫系が過剰に活性化されることで、乾癬性関節炎が悪化することがあります。

乾癬との関連

関節炎は、乾癬を持つ患者の15%程度に見られます。特に、乾癬が頭皮や爪などに現れている患者は、関節炎を併発するリスクが高いとされています。また、乾癬が先に発症し、その後に関節炎が進行するケースが多いです。

腸内細菌叢の影響

腸内細菌叢(腸内フローラ)のバランスが乾癬性関節炎の発症に影響を与えている可能性が示唆されています。腸内細菌のバランスが乱れると、免疫系が過剰に反応し、炎症が引き起こされやすくなると考えられています。特に、腸内で炎症を引き起こす特定の細菌が増えると、それが乾癬や乾癬性関節炎の悪化に繋がることがあります。

乾癬性関節炎の検査

乾癬性関節炎の診療にはさまざまな検査が必要です。

関節エコー検査

乾癬性関節炎では、腱や靭帯の付着部炎から始まり、その後に関節内滑膜炎が二次的に発生すると考えられています。このため、乾癬性関節炎の末梢関節では、エコー検査でドプラシグナルを伴う炎症所見が、関節内滑膜だけでなく、腱の付着部や関節外にも見られることが多いです。特に伸筋腱では、MCP関節付近で腱周囲に炎症が確認され、この所見は「peritenon extensor tendon inflammation(PTI)」パターンと呼ばれ、乾癬性関節炎に特徴的なものです。
さらに、爪のエコー検査では、正常の三層構造が失われ、肥厚した単一の高エコー層が確認されることがあります。爪床が明らかに肥厚し、ドプラシグナルを伴う炎症所見が認められることがあり、これも乾癬性関節炎を示唆する特徴的な所見です。

血液検査

血液検査では、乾癬性関節炎に特異的なバイオマーカーはまだ確立されていませんが、CRPなどの炎症マーカーが関節炎の活動性を反映します。また、乾癬性関節炎でも抗CCP抗体が陽性となることがあり、その場合、関節破壊のリスクが高く、肺病変を合併することが多い傾向があります。また、TNF阻害薬が効果を示しにくい可能性も示唆されています。

X線検査

乾癬性関節炎では、手指などの末梢関節が非対称的に侵されることが一般的です。また、脊椎や仙腸関節といった体軸関節にも病変が現れることがあり、これらの部位で骨の変化がないかをX線検査で確認します。手指では、骨びらんや骨増殖性変化が主な所見です。骨びらんは一般的に関節の辺縁(bare area)から生じ、骨増殖性変化は、関節周囲に非辺縁性骨棘や骨幹部の骨硬化として現れるのが特徴です。病気が進行すると「pencil-in-cup変形」と呼ばれる特有の形態が見られることもあります。また、脊椎では非辺縁性靭帯骨棘が形成され、乾癬性関節炎の診断において特徴的な所見です。

MRI検査

乾癬性関節炎の診断や評価において、エコーやX線で十分な評価ができない場合にMRI検査を行うことがあります。手指のMRIでは、滑膜炎、腱鞘炎、付着部炎に加え、骨髄浮腫など骨の内部の変化も捉えられることが利点です。また、脊椎や仙腸関節における付着部炎の評価にMRI検査を用いることもあります。
検査は当院の連携施設で実施し、迅速な結果説明が可能です(最短当日)。

このように、乾癬性関節炎の診療には複数の検査が必要となる場合があり、それぞれの検査が診断や治療方針の決定などに重要です。全ての検査が必要になるわけではありませんが、適切な検査の組み合わせにより、正確なご病状の評価が可能になります。

乾癬性関節炎の治療

乾癬性関節炎の治療は、日本皮膚科学会ガイドライン2019、GRAPPAによる治療推奨(2021年)、EULARリコメンデーション2019などに基づき、患者様のご病状とご意向に合わせて、以下のような治療が選択されます。
なお、中等症以上の乾癬性関節炎では、生物学的製剤などの、関節破壊の進行を抑える効果が証明されている強力な治療を早期から導入することが推奨されています。

非ステロイド性抗炎症薬

関節症状が軽度である場合、まず非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)が使用され、痛みや炎症の軽減を目指す場合があります。

従来型合成疾患修飾性抗リウマチ薬

NSAIDsで十分な効果が得られない場合、メトトレキサートなどの従来型合成疾患修飾性抗リウマチ薬(csDMARDs)が使用され、症状の改善と関節破壊の抑制を治療目標とします。

生物学的製剤

csDMARDsで効果が不十分な場合には、TNF阻害薬(インフリキシマブ、アダリムマブ)、IL-17阻害薬(セクキヌマブ、イキセキズマブ)やIL-23阻害薬(グセルクマブ)、IL-12/23阻害薬(ウステキヌマブ)などの生物学的製剤を使用し、関節症状と皮膚症状の改善を目指します。なお、体軸関節炎が主体の場合はTNF阻害薬やIL-17阻害薬が、炎症性腸疾患やぶどう膜炎を合併する場合にはTNF阻害薬が優先されます。一方、皮膚症状が強い場合はIL-17阻害薬やIL-23阻害薬、IL-12/23阻害薬が選択されることが多いです。

JAK阻害薬

JAK阻害薬(ウパダシチニブ)も生物学的製剤と同様の位置付けですが、一般的には生物学的製剤が不適当な場合に使用されます。飲み薬であるため患者様の利便性が高いことが特徴です。

PDE4阻害薬

PDE4阻害薬(アプレミラスト)は、軽度から中等度の皮膚症状および関節症状の患者様に使用されることがあります。顕著な免疫抑制を伴わずに炎症を抑えるため、特に感染リスクが高い患者様にとって使用しやすい薬剤です。

皮膚科との連携

関節症状だけでなく、皮膚症状への配慮も治療において非常に重要です。そのため、皮膚科とリウマチ科が協力して治療を進めることが求められます。

このように、乾癬性関節炎の治療は、患者様のご病状やライフスタイル、ご意向に応じて柔軟に選択する必要があり、最新のガイドラインに基づいた個別化治療が求められます。

(2024年9月9日時点)

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