リウマチ性多発筋痛症

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リウマチ性多発筋痛症とは

リウマチ性多発筋痛症とは

リウマチ性多発筋痛症(PMR)は、肩や股関節周辺の筋肉に強い痛みやこわばりを引き起こし、特に朝のこわばりが顕著な炎症性疾患です。通常、急激に発症し、50歳以上の方に多く、特に女性に多い傾向があります。発熱や倦怠感を伴うことが多く、血液検査ではCRPなどの炎症マーカーが非常に高いことが特徴です。従来はもっぱらステロイド薬の内服治療が行われましたが、近年ではメトトレキサートやIL-6阻害薬(いずれも保険適応外)などの薬剤が導入されることで、ステロイドを早期に中止する治療方針が一般的に採用されています。適切な治療を行えば予後は良好であることが多いですが、巨細胞性動脈炎の合併に注意が必要です。

放置すると全身の強い炎症と痛みが体力を消耗し、高齢者だと寝たきりになってしまうこともあります。突然発症した両肩の痛みなどの症状がある場合は、できるだけ早く受診していただきたいと思います。

当院では正確な診断を行い、最適な治療を提案させていただきます。

リウマチ性多発筋痛症の症状

リウマチ性多発筋痛症では、以下のような症状が現れることがあります。

  • 肩や股関節周辺の筋肉の痛みとこわばり
  • 腕を上げること(バンザイ)ができない
  • 階段を上がるのが困難
  • 朝のこわばりが1時間以上続く
  • 微熱や倦怠感が続く
  • 痛みによる日常動作の制限
  • 突然の発症で、発症日を特定できる など

リウマチ性多発筋痛症の原因

リウマチ性多発筋痛症の根本的な原因は明らかになっていませんが、以下の可能性が考えられています。

加齢に伴う免疫系の変化

リウマチ性多発筋痛症は多くが50歳以上の方に発症し、加齢に伴う免疫系の変化が重要な要因と考えられています。免疫系の調節機能が低下することで、慢性炎症が発生しやすくなることが発症に関与しているとされています。

遺伝的要因

HLA-DRB1遺伝子に関連する特定のアレルがリウマチ性多発筋痛症の患者様に多く見られることが研究で報告されています。これは、免疫系の異常な反応に関与する遺伝的素因が、発症リスクを高める可能性を示唆しています。

環境要因

ウイルス感染などの環境要因が、発症の引き金となる可能性があります。感染によって免疫系が過剰に活性化し、炎症が引き起こされることがあると考えられています。

巨細胞性動脈炎との関連

リウマチ性多発筋痛症は、巨細胞性動脈炎をしばしば併発し、両者は共通の病態メカニズムを持つと考えられています。巨細胞性動脈炎は主に大血管に炎症を引き起こす疾患で、両者ではIL-6を含む炎症性サイトカインの過剰な産生が見られることや発症年齢が高いことなど、共通の特徴があります。

これらの要因が複雑に絡み合い、リウマチ性多発筋痛症の発症に関与していると考えられています。

リウマチ性多発筋痛症の検査

リウマチ性多発筋痛症の診療にはさまざまな検査が必要です。

関節エコー検査

関節エコーは、リウマチ性多発筋痛症の診断および経過観察において非常に有用な検査方法です。ACR/EULAR 2012暫定分類基準でも、関節エコーの有用性が示されており、特に肩や股関節周囲の滑液包炎や腱炎の評価に役立ちます。リウマチ性多発筋痛症では、両側肩関節周囲の滑液包炎が特徴的であり、これが診断上重要な所見となります。

リウマチ性多発筋痛症と高齢発症関節リウマチは、肩や股関節の大関節に急性発症の痛みやこわばりが現れる点や、リウマトイド因子や抗CCP抗体が陰性でCRPが高値を示す点などで非常に似ています。関節エコーにおいて、高齢発症関節リウマチでは、肩関節の滑膜肥厚が目立ち、滑液包炎を伴っていても滑膜肥厚を伴う増殖性滑液包炎を認めることが多いのに対し、リウマチ性多発筋痛症では、肩関節滑膜炎は目立たず、滑液包炎も滑膜肥厚を伴わないことが多いとされています。両者は治療法や関節予後が異なるため、その鑑別が非常に重要です。

血液検査

血液検査では、リウマチ性多発筋痛症の診断に重要な指標としてCRPや赤沈(ESR)が挙げられます。これらの値が高値を示すことが一般的であり、炎症の程度を評価するために用いられます。また、関節リウマチとの鑑別のために、リウマトイド因子(RF)および抗CCP抗体の測定も行われます。リウマチ性多発筋痛症ではこれらの抗体が陰性であることが一般的です。また、感染性心内膜炎など血流感染でも同様の症状が出現することがあり、それを否定するために血液培養などを行う場合もあります。

X線検査

X線検査は、関節リウマチや他の関節疾患との鑑別に用いられます。特に関節の骨変化や破壊の有無を確認するために有用です。リウマチ性多発筋痛症では通常、X線で明確な骨変化は見られませんが、鑑別診断の一環として実施されます。

CT検査

CT検査は、悪性腫瘍のスクリーニングや除外、合併しうる大血管炎の評価に用いられます。特に、腫瘍随伴症候群として多関節痛を呈する場合があり、これを除外するためにCTが必要です。また、巨細胞性動脈炎の評価にはFDG-PET/CTが有用です。
検査は当院の連携施設で実施し、迅速な結果説明が可能です(最短当日)。

MRI検査

MRI検査は、エコーで詳細な評価が難しい場合や、関節リウマチとの鑑別において用いられます。特に、関節リウマチで見られる骨髄浮腫などの骨所見の存在を否定するために有用です。
検査は当院の連携施設で実施し、迅速な結果説明が可能です(最短当日)。

 

このように、PMRの診療には多角的な検査が必要であり、それぞれの検査が診断、鑑別診断、治療方針の決定に重要な役割を果たします。全ての検査が必要になるわけではありませんが、適切な検査の組み合わせにより、正確な診断と最適な治療が可能になります。

リウマチ性多発筋痛症の治療

リウマチ性多発筋痛症の治療は、主にグルココルチコイド(ステロイド)を使用します。ステロイドは通常、効果が高いのですが、減量する過程で再燃しやすいため、他の薬を併用することがよくあります。できるだけ早くステロイドを減らし、最終的には中止できるように、様々な工夫がされています。

ステロイド

一般的には、プレドニゾロン15〜20mg/日で治療を開始し、症状の改善に応じて、できるだけ早期にステロイドを減量し、中止を目指します。しかし、ステロイドの減量中に症状が再燃することが多いため、ステロイドに加えて免疫抑制剤の使用が推奨されることがあります。

免疫抑制剤

ステロイドの効果を補完するための免疫抑制剤として、メトトレキサート(*)やIL-6阻害薬が使用されることがあります(*)。特に、トシリズマブ(アクテムラ®️)やサリルマブ(ケブザラ®️)といったIL-6阻害薬は、リウマチ性多発筋痛症においてステロイドの減量を助け、再燃を防ぐ効果が期待されます。一方で、TNF阻害薬の有効性は限定的であることが知られており、通常はリウマチ性多発筋痛症の治療に推奨されません。
リウマチ性多発筋痛症は、治癒が可能な病気であり、最終的な治療の目標は薬剤を全て中止することです。ただし、治療には時間を要することもあり、薬剤の副作用を含めた慎重な管理が必要です。

*適応外

巨細胞性動脈炎を合併する場合

リウマチ性多発筋痛症に巨細胞性動脈炎を合併する場合には、特に眼動脈病変に伴う虚血性視神経症による視力障害に注意する必要があります。巨細胞性動脈炎を合併する場合には、プレドニゾロン30〜60mg/日程度で治療を開始し、ご病状の経過に応じてトシリズマブ(アクテムラ®️)を追加することがあります。

適切な治療方針を立てることで、副作用のリスクを管理しながら、患者様の症状を効果的に改善し、最終的には治癒を目指すことが可能です。

院長は、長年、大学病院や高度医療機関などで多くの患者様の治療にあたってまいりました。豊富な診療経験をもとに、的確に診断を行い、最適な治療を提案させていただくことが可能です。

(2024年9月9日時点)

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