脂質異常症

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脂質異常症とは

脂質異常症とは

脂質異常症とは、血液中の脂質(コレステロールや中性脂肪)のバランスが崩れた状態を指します。具体的には、LDLコレステロール(いわゆる「悪玉コレステロール」)が高すぎる、HDLコレステロール(「善玉コレステロール」)が低すぎる、中性脂肪が多すぎるといった異常が見られる場合に診断されます。

この状態が続くと、動脈硬化のリスクが高まり、心筋梗塞などの冠動脈疾患や、脳卒中などの脳血管障害を引き起こす可能性があります。脂質異常症は、食事や運動などの生活習慣の改善や、必要に応じて薬物療法を組み合わせることで管理することが重要です。

脂質異常症の種類

脂質異常症には主に3つのタイプがあります。

高LDLコレステロール血症

LDLコレステロールは、「悪玉コレステロール」と呼ばれ、血液中のコレステロールを全身の細胞に運ぶ役割を担っています。しかし、LDLコレステロールが過剰になると、血管壁にコレステロールが蓄積し、動脈硬化を引き起こします。これにより、冠動脈疾患などのリスクが増加します。

特に注意が必要なのは、家族性高コレステロール血症という遺伝性疾患です。この病気は若い頃からLDLコレステロールが非常に高く、動脈硬化が早く進行するのが特徴です。300人に1人程度の割合で見られ、決して稀な疾患ではありません。

症状が現れる前でも、動脈硬化が早く進行し、20〜30代で心筋梗塞を発症するリスクが高いです。若い頃からLDLコレステロールが高いと指摘された場合や、近親者に同様の方がいる、または若い頃に心筋梗塞を発症した方がいる場合には、家族性高コレステロール血症が疑われ、適切な診断と治療が必要です。

高トリグリセリド血症

トリグリセリドは、中性脂肪の一種で、エネルギー源として体内に貯蔵されます。トリグリセリドは、コレステロールの異常よりも動脈硬化への影響は比較的少ないですが、他のリスク因子(高LDLコレステロールや低HDLコレステロール、高血圧、喫煙、糖尿病など)と組み合わさることで、動脈硬化や冠動脈疾患のリスクがさらに高まるとされています。また、非常に高いトリグリセリド値は、急性膵炎のリスクも高めます。

低HDLコレステロール血症

HDLコレステロールは、「善玉コレステロール」として知られ、血管壁に蓄積した余分なコレステロールを回収し、肝臓に戻す働きをしています。HDLコレステロールが低い場合、この役割が十分に果たされず、動脈硬化の進行が促進されます。その結果、冠動脈疾患のリスクが高まると報告されています。

脂質異常症の症状

脂質異常症は、ほとんどの場合、自覚症状がありません。そのため、定期的な健康診断などによる早期発見が非常に重要です。しかし、長期にわたって放置されると、以下のような症状が現れることがあります。

  • 黄色腫
  • 黄色腫は、血中のコレステロールやトリグリセリドが異常に高い状態が続くことで、皮膚や腱、まぶたなどに脂肪が沈着し、黄色い隆起や塊として現れる症状です。これらの隆起は、一般的に「黄色腫」と呼ばれ、その形状や発生部位に応じて分類されます。例えば、腱黄色腫はアキレス腱や指の腱に見られることが多く、まぶたにできるものは眼瞼黄色腫と呼ばれます。

  • 角膜輪
  • コレステロールが角膜に沈着し、目の周りに白い輪のようなものが現れることがあります。これは特に高齢者に多く見られますが、若い年齢で見られる場合は、家族性高コレステロール血症の可能性があります。

脂質異常症の合併症

脂質異常症では、血液中のコレステロールやトリグリセリドが異常に増加することで、さまざまな合併症が発生するリスクが高まります。これらの脂質の過剰な蓄積は、主に動脈硬化を進行させることで冠動脈疾患や脳血管障害などの重大な疾患を引き起こします。

冠動脈疾患

冠動脈(心臓を取り巻く血管)が動脈硬化によって狭窄または閉塞すると、狭心症や心筋梗塞が発生するリスクが高まります。これは、動脈硬化により血管が狭くなり、心筋への血流が制限されるためです。

脳血管障害

脳の血管が動脈硬化を起こすと、脳卒中(脳梗塞や脳出血)が発生する可能性があります。これにより、突然の麻痺や言語障害、意識障害などが生じ、後遺症が残る場合があります。

末梢動脈疾患

動脈硬化が末梢の動脈に影響を及ぼすと、特に足の血流が悪化し、歩行時に痛みやしびれを感じる間欠性跛行が生じます。さらに進行すると、潰瘍や壊疽を生じることがあります。

慢性腎臓病(CKD)

腎臓の血管に動脈硬化が進行すると、腎臓への血流が減少し、慢性腎臓病(CKD)が進行するリスクがあります。

膵炎

膵炎は、特にトリグリセリドが極端に高い場合に発生することがあります。動脈硬化とは異なる機序で、トリグリセリドが膵臓の細胞にダメージを与え、急性膵炎を引き起こす可能性があります。急性膵炎は激しい腹痛や嘔吐を伴い、重症化すると命に関わることがあります。

こんな指摘を受けたら黄色信号

脂質異常症による合併症を防ぐためには、早期の発見と適切な治療が欠かせません。健康診断で以下のような指摘を受けた場合は、当院へご相談ください。

「LDLコレステロールが高い」と言われた

LDLコレステロールが140mg/dL以上の場合は、高LDLコレステロール血症の可能性があり、動脈硬化のリスクが高まります。

「中性脂肪が高い」と言われた

中性脂肪が150mg/dL以上の場合は、高トリグリセリド血症が考えられ、動脈硬化や膵炎のリスクが増加します。

「HDLコレステロールが低い」と言われた

HDLコレステロールが40mg/dL未満の場合は、低HDLコレステロール血症の可能性があり、動脈硬化の進行が促進されるリスクがあります。

脂質異常症の原因

脂質異常症の原因は多岐にわたり、主に生活習慣、遺伝的要因、他の疾患、および薬剤の影響が関与しています。

具体的には、高脂肪食や過剰なカロリー摂取、運動不足、過度の飲酒、喫煙などの生活習慣が、LDLコレステロールや中性脂肪の増加、HDLコレステロールの低下を引き起こし、脂質異常症の発症リスクを高めます。また、家族性高コレステロール血症などの遺伝的要因により、若い頃からLDLコレステロールが高い状態が続くこともあります。さらに、糖尿病や甲状腺機能低下症、ネフローゼ症候群などの疾患が脂質代謝に影響を与え、脂質異常症を引き起こすことがあります。ステロイド薬、利尿薬、IL-6阻害薬、JAK阻害薬などの一部の薬剤も、血中の脂質代謝などに影響し、脂質異常症の原因となることがあります。

脂質異常症の治療

脂質異常症の治療は、主に生活習慣の改善と薬物療法の2つの柱で構成されています。

生活習慣の改善

生活習慣の改善は、脂質異常症の管理において非常に重要です。具体的には、以下のような食事療法と運動療法が推奨されます。

食事療法

  • 脂肪分の多い食材を控える・・・バターやマーガリン、揚げ物などの高脂肪食品を避けることが基本です。これにより、LDLコレステロールの増加を抑えることができます。
  • 食物繊維を積極的に取り入れる・・・海藻、キノコ、野菜など、食物繊維が豊富な食品を選ぶことが重要です。食物繊維は、腸内でコレステロールの吸収を抑え、血中脂質のバランスを整える効果があります。
  • 不飽和脂肪酸を摂取する・・・オリーブオイル、アボカド、ナッツ、青魚(サバ、イワシ、サケなど)に多く含まれる不飽和脂肪酸を積極的に摂取しましょう。これらの食品は、LDLコレステロールを低下させる一方で、HDLコレステロールを維持または増加させる効果があります。また、不飽和脂肪酸は中性脂肪の低下にも寄与し、動脈硬化の予防に役立ちます。特にオメガ-3脂肪酸は、血液中のトリグリセリド(中性脂肪)を減少させる作用があり、心血管疾患のリスクを減少させることが医学的に証明されています。

運動療法

  • 有酸素運動を日常生活に取り入れることが推奨されます。例えば、1日30分程度のウォーキングやジョギングなどが効果的です。これにより、HDLコレステロールの増加と中性脂肪の減少が期待できます。

薬物療法

生活習慣の改善だけでは十分な効果が得られない場合、薬物療法が行われます。薬物療法は、主にコレステロールと中性脂肪の管理に分けて行います。

コレステロールの薬物療法

LDLコレステロール(悪玉コレステロール)を低下させるために、スタチン系薬剤が一般的に使用されます。スタチンは、肝臓でのコレステロール合成抑制を介して、血中のLDLコレステロールを減少させます。また、エゼチミブは、腸管からのコレステロール吸収を抑える薬として併用されることがあります。これにより、LDLコレステロールのさらなる低下が期待できます。

最近では、PCSK9阻害薬も使用されるようになっています。PCSK9阻害薬は、PCSK9というタンパク質の働きを抑えることで、肝臓のLDL受容体を増加させ、血中のLDLコレステロールを効果的に低下させます。この薬剤は特に、スタチンやエゼチミブで十分な効果が得られない場合や、スタチンが使用できない場合に有効です。

中性脂肪の薬物療法

中性脂肪が高い場合には、フィブラート系薬剤やEPA(エイコサペンタエン酸)製剤が用いられます。フィブラートは、肝臓での中性脂肪の合成を抑制し、血中のトリグリセリドを低下させます。EPA製剤は、魚油由来の成分で、中性脂肪を減少させる作用があります。

治療で大切にしていること

脂質異常症の治療の基本は、生活習慣の改善にあります。しかし、治療のためとはいえ、短期間で食事や運動習慣を大幅に変えることは容易ではありません。

大田区大森中・梅屋敷・蒲田のフォレスト内科リウマチ科クリニックでは、患者様お一人お一人の生活やお気持ちに寄り添いながら、丁寧に治療の提案を行っています。
コレステロール値が気になる方や、脂質異常症の治療に悩んでいる方は、ぜひ当院までご相談ください。

 

(2024年9月9日時点)

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